先日2月10日、文学館では「安岡章太郎展 ―〈私〉から〈歴史〉へ」関連企画として、安岡章太郎さんのご長女・安岡治子さんをお招きし、記念講演会を開催。春めく陽ざしのなか、会場いっぱいのお客様がお越しくださいました。
治子さんには「父の思い出」と題し、旅先やご自宅でのエピソードをはじめ、『流離譚』の記述に触れながら高知との関わりについて、好きなもの嫌いなものについてなど、さまざまな角度からご講演いただきました。
安岡章太郎さんはゆったりと流れる川、夕方の川辺がお好きだったそうで、イギリスのテムズ川やロシアのネヴァ川、ご自宅の近くを流れる多摩川とともに、高知市を流れる鏡川も名前が挙がりました。
上の写真は、日がかなり西に傾いた頃、『鏡川』にも描写のある築屋敷のほど近く、鏡川に架かる月の瀬橋から撮影したものです。川沿いをジョギングする人、散歩する人、緑地で語らう人々。皆思い思いに過ごす、なんとも自由で穏やかな時間が流れていました。
ご講演の中で『鏡川』は着想から長い年月を経て完成された作品とのお話もありました。今回の企画展では、当館所蔵資料の中からその構想を示す資料も初めて出展しています。この機会にぜひ作品が生み出される過程にもご注目いただければと思います。
(露)