【原文】勤則不匱
【訓読】勤むれば則ち匱(とぼ)しからず
【大意】努力さえすれば乏しくなることはない
【解説】
植木枝盛の書を扁額にしたもので、当館の寄託資料です。
「勤則不匱」は孔子の編と伝えられる歴史書『春秋』の注釈書『春秋左氏伝』の、「民生在勤、勤則不匱(民の生活は努力のいかんにある。努力さえすれば乏しくなることはない)」から来ています。前半の「民生在勤」は後に「人生在勤」とされ、取り上げられることも多い語ですが、「勤則不匱」に注目しているのが人の真似をしない枝盛らしいところです。
枝盛は非常に勉強家でした。海南私学退学後はほとんど独学で諸文献から学び、ジャンルも古典から翻訳、江戸の人情本まで多岐にわたっていました。
しかも、枝盛は読書をする際、書物を金科玉条とすることを徹底拒否し、その本に打ち勝とうとしました。
枝盛の書「勤則不匱」からは、ゆるぎない自己を確立するために絶え間なく努力し続けた枝盛のありようを窺うことができます。大変貴重な枝盛の自筆資料から、その言葉に向き合う枝盛の心や息遣いを想像して味わってみてください。