今ごろの季節を七十二候では「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」といい、虫たちはそろそろ冬支度を始める頃のようですが、人にとっては清々しく、過ごしやすい季節となりました。
この候と対をなすのが「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」で、人もまた春の訪れを感じてなんとなくそわそわ、外へ出かけたくなる頃ですが、今年は未知のウィルスが猛威をふるい、巣ごもりを余儀なくされてしまいました。
私も早々に旅行を諦め、外食も控え、すっかり引きこもりがちになっていたのですが、秋晴れの日曜日、久々に美術館へ行ってきました。北斎の技量にうなり、知ってるつもりの絵金はこんな絵も描いていたのかと驚き、お昼は長らく足が遠のいていたお店で美味しいものを。
昨年まではなんということのない、よくある休日の過ごし方だったのですが、今年はようやく、こういうことを楽しむ気持ちになってきたのだなと思ったことでした。
文学館は年内休館、虫と同じく戸をふさいでいますが、新年には寒さに負けず戸を開きます。
来年こそは、「今日は文学館にでも行ってみるかな」と心も軽くお越しいただけるような、穏やかな春を迎えられることを願ってやみません。(露)