高知県立文学館

KOCHI LITERARY MUSEUM
メニュー
  • 文学館の紹介動画
  • 収蔵資料検索
  • 高知県文化財団
  • 高知県立文学館 Facebookページ
  • 高知県立文学館 Twitter
文学館ニュース
文学館ニュース

文学館ニュース

■本について
初出:「文学界」1940(昭和15)年9月
単行本:高山書院より1940(昭和15)年12月に刊行

■あらすじ
主人公の「ぼく」が、昔の思い出を振り返って語る青春の物語。
ロサンゼルス・オリンピックに、日本ボートのクルーとして出場が決まった「ぼく」は、船上でハイジャンプの選手である熊本秋子に一目惚れする。しかし、写真を交換したところを先輩に見とがめられ、やがて選手の男女交際禁止が言い渡される。その日、秋子は「ぼく」に、そっと杏の実を手渡した―。

■作品について
この作品は、昭和7年の自身のオリンピック出場経験をもとに執筆した田中英光の出世作にして代表作であり、第7回池谷信三郎賞を受賞しました。
戦時中の昭和13年の春頃から書き始められていますが、当時は「杏の実」という題でした。同年7月、英光は現地召集を受け、この原稿を置いて出発、中国山西省で生死をさまよう体験をしています。除隊後の昭和15年春に太宰治を訪ね、太宰の勧めで「オリンポスの果実」に改題、数度にわたる太宰の修正を受けて書き上げられました。太宰を通して「文学界」に掲載されると、瑞々しく清新なこの作品は、青春小説として非常に高く評価され、英光の文壇登場のきっかけとなりました。
今の私たちが読んでもとても読みやすく、また主人公の弱さも含めてまさに青春といった爽やかな印象です。「ぼく」の両親が高知出身、ヒロインの熊本秋子も高知出身と、高知県ゆかりの作品でもあります。戦時中に書かれたという事情も含め、さまざまな読み方ができる興味深い作品です。

TOPへ