【本について】
1965(昭和42)年10月に高知市民図書館より刊行。
【作品について】
この本は、若尾瀾水の主要な俳論や俳句などを収めた俳論集です。
特に、サブタイトルにもある正岡子規の死に関連して書かれた「子規子の死」は、瀾水の俳論の中で最も知られている文章です。
「子規子の死」は、「木兎(みゝつく)」第2巻9号に発表されました。子規が亡くなった直後でさまざまな追悼文が出ている中、瀾水の文は他と一線を画し、厳しい子規批判がなされていました。とはいえ、子規の評価すべき点はきちんと認めていましたし、どちらかと言えば子規その人よりも、取り巻きに対しての批判が大きくありました。のちに評価もされている文章です。
この文章に対して、当時五百木飄亭(いおき ひょうてい)からの反論がありましたが、ほとんどの門人はこれを無視、結局瀾水は帝大卒業後、俳壇を長い間退くことになります。
しかし、この本に収められた瀾水の俳論を通して読むと、佐藤紅禄らと共に子規に負けまいと頑張っていた仙台時代や、晩年まで続けていた与謝蕪村研究など、「子規子の死」にとどまらない瀾水の魅力も見え、子規批判だけを取り上げられて論じられているのがもったいない人だと感じさせます。
ぜひ幅広い瀾水の魅力を感じていただきたいと思います。