【本について】
単行本:2004(平成16)年11月、アスキーメディアワークスより刊行。
文庫本:2008(平成20)年6月、KADOKAWAより刊行。特別書き下ろし「仁淀の神様」収録。
【あらすじ】
仁淀川沿いに住む高校生の主人公・斉木瞬と、その幼馴染の天野佳江(かえ)が、クラゲに似た奇妙な生物と遭遇したことをきっかけに、自衛隊や政府を巻き込んだ大きな事件に飲み込まれていく……。
【解説】
有川ひろの自衛隊三部作『空の中』『海の底』『塩の街』の一つです。高知県を流れる仁淀川近辺が作品舞台の一つとなっています。
自衛隊員だった父を亡くした瞬の喪失や葛藤と、彼を支える佳江の優しさは胸を打ちます。また彼らが育てるクラゲもどき(フェイク)の愛らしさ、仁淀川の美しく豊かな自然や土佐弁も、この作品の大きな魅力です。
そして登場人物の中でひときわ強い印象を与えるのは、瞬の祖父と懇意だった仁淀川漁師の宮田喜三郎(宮じい)です。一人ぼっちになった瞬に対し、親のように接してくれる宮じい。その言葉には無駄がなく、事件に巻き込まれていくたくさんの人の心を救ってくれます。
文庫本で追加された掌編「仁淀の神様」は、この「宮じい」のモデルとなった方に捧げられています。
台湾でも刊行されており、当館には著者から寄贈された台湾版『空の中』が所蔵されています。