馬場孤蝶(本名:勝弥)は明治2(1869)年、高知市金子橋(現・升形)で誕生しました。
10歳の頃に両親と共に上京、明治学院卒業後は高知をはじめ各地の中学校で教鞭をとる傍ら同窓の友・島崎藤村らと「文学界」の同人としてロマンチックな詩や小説を発表し、随筆、評論、翻訳の分野でも活躍。
明治39(1906)年から慶應義塾大学の教授を勤め、海外の優れた文学作品を紹介し、日本で初めてトルストイ著『戦争と平和』を全訳しました。
孤蝶の作品は随筆『明治文壇回顧』など今読んでも面白いものが多く、物事の本質を捉え、鋭く切り込みつつも軽やかに流れる文章は洒脱で、孤蝶本人の魅力と相まって現代でも静かな人気を呼んでいます。
今回の展示では、書簡や色紙などの資料を通して、孤蝶の趣味や交友関係、樋口一葉との関りや高知との関係など多角的な視点でご紹介しています。
孤蝶の深い見識は創作よりも評論・随筆の分野で特に発揮され、教え子であった小島政二郎、佐藤春夫、井汲清二、森下雨村らに外国文学の面白さや幅広い物事の見方を教えました。
展示を通して、孤蝶の魅力や土佐人らしい反骨精神に触れていただければ幸いです。