広島県生まれ。作家。小説、随筆、紀行、詩、童話などを温かなユーモアと悲哀を織り交ぜ執筆、翻訳も手掛けた。若き日の文学修行時代の師でもあり仲間でもあった田中貢太郎の病気見舞いなどで幾度となく高知を訪れ、高知を材にした作品も多い。
1898(明治31) 広島県深安郡加茂村(現・福山市加茂町)に生まれる。本名井伏満寿二(いぶしますじ)。 当初は画家を志すも、兄の勧めもあり文学に転向。早稲田大学文学部仏文学科に進む。 |
1923(大正12) 前年に早稲田大学を退学。同人雑誌「世紀」に参加し、「山椒魚」の原型となる「幽閉」を発表。 9月、関東大震災にあい帰郷。翌月再上京し、田中貢太郎を訪ねる。 貢太郎は井伏に仕事を与え、佐藤春夫を紹介し、文壇に押し出した。 |
1930(昭和5) 最初の作品集『夜ふけと梅の花』刊行。太宰治が面談を求め、以降、師弟として交流。 |
1934(昭和9) 田中貢太郎が主宰する「博浪沙」の同人となる。 翌年、博浪沙同人による高知旅行に参加し、名所旧跡や室戸岬を観光。 |
1938(昭和13) 「ジョン万次郎漂流記」により第6回直木賞を受賞。 |
1940(昭和15) 2月、安芸の小松屋旅館で倒れた田中貢太郎を見舞い、滞在先のホテルで「へんろう宿」を執筆。 |
1941(昭和16) 2月、田中貢太郎の葬儀に参列。12月、陸軍に徴用されマレー、シンガポールへ渡り「昭南タイムズ」の編集兼発行人となる。 翌年11月、徴用解除となり帰還。 |
1956(昭和31) 「漂民宇三郎」その他により第12回日本芸術院賞受賞。 |
1966(昭和41) 前年に連載を始めた「黒い雨」(「姪の結婚」を改題)で第19回野間文芸賞受賞。第26回文化勲章を受章。 |
1993(平成5) 7月10日死去。95歳(満)。 |
<おもな著作>
小説『山椒魚』
『ジョン万次郎漂流記』
『さざなみ軍記』
『黒い雨』
詩集『厄除け詩集』
翻訳「ドリトル先生」シリーズ
全集『井伏鱒二自選全集』(全12巻補巻1)
『井伏鱒二全集』(全28巻別巻2)
<おもな企画展> 巡回展「井伏鱒二と中・四国路」(平成20年4月13日~5月25日)
図録は→こちら