【葉書表】
仙臺市道場小路
六番地桜井内
若尾庄吾殿
東京根岸
子規
【葉書裏】
見事なる大梨
ありかたく候
ザボンより大き
な梨をもらひ
けり
【解説】
この資料は、若尾瀾水が様々な有名人の筆墨を収集した折本「寸裂錦」中に貼り込まれているもので、瀾水が子規に梨を贈ったことに対する返礼の葉書です。
「ザボンより大きな」の「ザボン」は文旦のことです。江戸時代の博物誌『大和本草』を見ると、すでに文旦は江戸時代には四国や九州にあり(当時は朱欒(ザンボ)と呼ばれていました)、大きいものは一尺五寸(45センチ)、普通でも三、四寸とあります。少なくとも9~12センチよりも大きな梨だったと言えます。
高知の大きな梨というとつい新高梨を連想してしまいますが、新高は1927(昭和2)年に開発された梨なので、まだ世に登場していません。おそらく、高岡の今村梨ではないかと推測されています。
この葉書の内容は『子規全集』にも掲載されていたもので、実物は瀾水のご遺族が大切に持っておられ、のちに当館に寄贈されました。
当時の瀾水と子規の関係性を彷彿とさせる、とても温かみのある手紙の内容となっています。